NUSのビジネススクールは、世界的にみても、教育の質が高いと良い評判を得ています。特に、MBAプログラムは日本人の方にも人気が高く、MBA学生の1割近くが日本人とのことです。
MBAプログラムについて詳しく知りたい方は、NUS MBA 非公式サイトをご紹介します。
今回の記事では、大学や他のウェブサイトなどで得られる情報のみならず、現役大学生の目線からフランクに、ビジネス学部を紹介していきます。
得られる知識・スキルセット
何を学ぶのか?どのような知識・スキルを得られるのか?
ビジネス学部では、世の中の会社や組織全般を運営・管理するにあたって必要な知識を学びます。
この知識は、業界の壁を飛び越えても通用するものですので、後の「卒業生の進路」のセクションでも説明しますが、必ずしもビジネススクール=銀行や証券会社に就職ということではありません。
ハードスキルとソフトスキルの二刀流
スキルとしては、ハードスキルとソフトスキルを両方とも得られるのが他学部とは違って、NUSビジネススクールの特徴だと思います。ハードスキルとして、もちろん会計や金融を学んだり、データ分析などの知識のインプットも多いです。
しかし、ビジネススクールではクリエイティビティのある発想や求められることが多かったり、またプレゼンテーションをする機会が多いので、ビジネスパーソンとなるにあたって必要なソフトスキルなども身につけられます。学部生は全般的に明るく話し上手で、彼らかじょ野良と交流しているうちに、自然とネットワーキング力も磨かれるかと思います。
専門(Specialization)
NUSビジネススクールの学生は、会計学主専攻(major)と、経営学主専攻の二つのグループに別れます。
主専攻はそれぞれの会計と経営に別れますが、専門は、会計学の生徒も経営学の生徒も、同じオプションの中から選びます。
ビジネススクールの学生は、以下七つの専門の中から、最低でも一つ、人によっては二つ(double specialization)選んで、だいたい3〜4年目にその単位を取っていきます。
- Business analytics
- Innovation & entrepreneurship
- Business economics
- Leadership & Human capital management
- Finance
- Marketing
- Operation & supply chain management
以下、それぞれを学習内容や、卒業後の進路を簡潔に説明していきます。
- Business analytics
この専攻では、ビジネス業界に関連する、データサイエンスに近いことを学びます。金融や、投資、サプライチェーン、人事関連の膨大なデータを読み込み、最終的にはそれから価値のある分析結果を発見するのを目標とします。
コンピューター科学部にも、Business Analytics Major がありますが、違いは何かというと、ビジネススクールのBusiness Analyticsは、より応用に重きを置いているということです。コーディングももちろんありますが、コンピューター科学部のBusiness Analyticsに比べたら少ないです。
このプログラムを通して、データサイエンティストと、企業の重大な決断をする執行役員や管理職の方の仲介人のような存在になる人材を育成するのが大学としての目標のようです。
専攻単位について詳しく知りたい方向けのリンク:
- Innovation & entrepreneurship
この専攻では、学生にアントレプレナーシップ・マインドセット(起業家精神)を備え付けることを目標にしています。
アントレプレナーシップは、組織の規模に限らず、重要なマインドセットです。常に未開拓のマーケットを探し求め、人々のニーズに答える方法を模索する姿勢は、どんな環境にても重要です。
しかし、単位まで取らなくても、NUSにはNUS Entrepreurship Society や、インキュベーターが存在するので、そのようなプログラムから、実際に経験を積むのも手かもしれません。
- Business economics
経営コンサルや、経済コンサルに興味がある人は、この専攻も興味深いかもしれません。経済学専攻(ビジネススクールではなく、社会科学学部の傘下)との違いは、企業の経済を勉強をするので、国や世界規模のマクロ経済などではなく、個人や企業に関する金銭的事柄に焦点を置いていることです。
この専攻は、ビジネススクールの他の専攻の単位が多く混ざっています。経済学だけでなく、人事管理の単位や、Business Analytics、マーケティングの単位が含まれているので、バランス良く、企業経営に関する知識を身につけられると思います。
- Leadership & Human capital management
人材マネジメントは、他の専攻に比べても時代による変化が激しい分野の一つです。人事のトレンドは月単位で変化しますし、近年のスタートアップ企業の増加にともなり新しい組織の構造も出てきています。これに合わせて、この専攻の授業の内容も常にアップデートされます。
人材コンサルティングや、企業の人材スペシャリスト、人事ポリシーメイキングなどに興味がある人には、適した専攻でしょう。
専攻単位について詳しく知りたい方向けのリンク:
- Finance
ビジネススクールで一番人気があるのが、この金融学専攻です。人気の理由は、ビジネススクールには、銀行や、政府系の金融機関などで働きたいという学生が多いからです。
金融学では、個人あるいは企業対象の投資や資産の管理法を学びます。この中には、投資、ファイナンシャル・プランニング、保険、リスク管理、M&A(企業の合併や買収)、株式調査、フィンテックなどの多様なトピックが含まれています。
現在金融機関で使用されているソフトウェアを利用した単位もあり、ここでも新卒でありながらも即戦力となるような人材を育てようとする大学の意思が伺えます。
金融学専攻のカリキュラムは、CFA(Chartered Financial Analyst: 金融界のグローバル・パスポートとも呼ばれる、国際的な投資プロフェッショナルの資格)のカリキュラムを一部導入しており、将来金融界で活躍を考えている生徒にとっては良い下準備になるでしょう。
専攻単位について詳しく知りたい方向けのリンク:
- Marketing
マーティング専攻では、企業やクライアントについて知るだけでなく、社会全体の動向を理解するために、政治・経済・社会などの勉強ものようなこともするようです。
それと、NUSのビジネススクールではアジアというコンテキストに重きを置いていて、ケーススタディの紹介などが多いマーケティングの授業では、その取り組みが一番顕洗われていたと思います。私がとったマーケティングの必須単位のケーススタディに日本企業の事例がたくさん紹介されていて、面白かったのを覚えています。
卒業後は、P&Gや、Uniliver、L’Orealなどの、FMCG(Fast Moving Consumer Goods 消費者向けの定格製品を販売する業界)に就職したいという学生が多いです。
専攻単位について詳しく知りたい方向けのリンク:
- Operation & supply chain management
この専攻では、特にリテールなどの業界で重要になってくる、 原材料の調達から生産・在庫・販売に至る物の流通(ロジスティックス)、要するに、サプライ・チェーンについて勉強します。
商品をどれくらい生産すべきか、どこの工場にどれくらい発注すればいいか、どの店舗にどれくらい商品を発送するのか、など、企業にとって一番効率的で安価な物流システムを作ったり、管理したりします。
Business Analytics と関連しているところが多く、実際に重なる専攻単位もあります。
専攻単位について詳しく知りたい方向けのリンク:
NUSは、ビジネススクールに限らず、学生達の要望や、世の中の需要に合わせて、カリキュラムを毎年見直しています。ビジネススクールが提供する専門の種類も、世の中のビジネストレンドに合わせて数年ごとに変化します。数年前追加された新しい専門は、Innovation & entrepreneurship で、これは政府の国内の起業家育成促進という要望だったり、世の中の若者による起業の波に乗ったものではないかと思います。
専門分野に関して詳しく知りたい方は、NUS BBAのウェブサイトをご覧ください。
第二専攻・副専攻(Second Major / Minor)
この二つの違いは、取る単位数の違いです。副専攻は、主専攻の単位に加えて五つ科目を取れば修了証明書がもらえますが、二つ専攻を取る場合は、より多くの単位を取る必要があります。
二つ専攻を取るというのは、二つ学位を取るのと別で、普通に学位をふたつ取ろうと思ったら、卒業しようと思えば5年かかります。けどもちろん、他の学生よりも毎学期多くの単位を履修して、5年より早く卒業することもできます。第二専攻を取る場合は、そこまで卒業にかかる時間に影響はないはずです。
NUSでは、学部によって審査なしで取れる副専攻の種類が異なります。ビジネススクールでは、以下のリストから選択できます。
第二専攻(経営学科のみ)
- Business Analytics
- Communications & New Media
- Economics
- Psychology
副専攻(会計学科)
- Statistics
- Quantitative Mathematics
副専攻(経営学科)
- Psychology
- Communications & New Media
- Real Estate
- Statistics
- Quantitative Mathematics
- Public Health
これら以外の専攻も、取ろうと思えば取れますが、審査を通る必要があります。その審査は、成績なのか、何を基準にしているかは、私も気になるところです。
カリキュラム
ビジネススクールの必須単位は、会計・経営学科共通で、基本的には2年生の終わりまでに必須単位を消化します。
必須単位についての詳細は、このウェブサイトの “Core Modules”のセクションを読んでください。
3年生〜4年生の間に、自分の専門単位を取り、専門性を高めます。
最初の数年に消化する必要がある必須単位が多いため、ビジネススクールの学生は大学の初めには、あまり取る単位の自由がありません。ですので、Unrestricted Elective Modules (学部関係なく取れる自由単位)は、1年目には少なめで、2年目から積極的にとっていくひとが多いような気がします。
授業スタイル(評価基準)
200−300人規模の講義(今は全てZoom)と、tutorialがあります。Tutorialでは、その週の宿題のディスカッションを行ったり、学生によってはインストラクターに講義でわからなかったところを聞いたりします。
これ以外は、Sectional Teaching と言って、50人ほどの対面授業で、講義とtutorialを合体させたような授業を行います。
Tutorial やSectional teachingでは、授業のディスカッションにどれだけ積極的に参加したかを評価されます。この評価の割合は学部によって大きく違います。例えば工学部では、授業でどれだけ発言したかは全く成績に反映されませんが、ビジネススクールでは、全体の成績の15%にも及びます。
将来ビジネスパーソンになる人には、大勢の前で自分の意見を流暢に話せる必要があると大学が判断した上でのシステムなのだと思います。実際、私も入学当初はなかなか発言できずにいましたが、徐々に50人規模のsectional teaching クラスであまり躊躇うことなく発言できるようになりました。
大学内での学部生のイメージ
ビジネススクールは、大学の中で一番華やかな学部だと言っても、誰も反対しないと思います。シンガポールの学生の多くは、キャンパスに部屋着すっぴんで行く子達が多い中、ビジネススクールの学生の中にはブランドTシャツを来ている男の子や、オシャレな服を着て、メイクをして染めた髪を巻いた女の子が多くみられます。日本の大学のイメージに近いかもしれません。ビジネススクールの学生は、すぐに見分けられます。
次の特徴は、コミュ力の高さです。ビジネススクールの学生同士なら、初対面で、相手がどんな人でも、気まずくならずそれなりに会話が続きます。ビジネスの世界では、ネットワークが鍵なので、人と話すのが苦にならない人たちが集まるのも、納得いきます。ですが、コミュ力が高いが故に、他の学部生からは、表面上の付き合いが多い連中だと思われていることも多いかもしれません。
おわりに
この記事では、ビジネススクールについて知っておきたい情報を、内部目線から共有させていただきました。
もし、カリキュラムや専門について聞きたいことがあれば、どうぞお気軽にメールやインスタのDMで質問してください。答えられる範囲で答えさせていただきます。
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